アシュアランス
IFRS outlook 増刊

リース会計-資産及び負債の測定に関する規定の明確化

2011.04.19
リース会計-資産及び負債の測定に関する規定の明確化

重要ポイント

  • 両審議会は引き続き、リース会計に関する提案内容を見直し、関係者が懸念している事項の解決に取り組んでいる。
  • リースとリース以外の要素の区別に関して、サービス及び履行費用をリースとは別個に会計処理する(すなわちリース会計に含めない)旨の変更案が暫定的に決定された。
  • リース契約で認識される資産及び負債の当初測定に関する規定が明確にされた。
  • 購入オプション、短期リース、セール・アンド・リースバック取引の会計処理についても、公開草案から変更されることが暫定的に決定された。

概要

国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)(以下、併せて両審議会)は、公開草案で提案された使用権モデルに基づいて認識される資産及び負債の測定に関して、より明確な規定や適用ガイダンスを提供することを暫定的に決定した。

具体的には、リースとリース以外の要素の区別、リースに含まれる購入オプションの会計処理、リースに関連する資産及び負債の当初測定、短期リースの会計処理などを公開草案から変更することが暫定的に同意された。

また、セール・アンド・リースバック取引についても重要な変更が暫定的に決定されており、公開草案よりも多くの取引で売却処理が適用されることになる。

両審議会は、リースの定義、特定のリースにおける定額法での収益・費用の認識、貸手の会計処理など、決定しなければならない主要論点をまだ有している。今後の審議会で検討しなければならない主要論点には、他にも、事後測定及び再評価、減損、表示及び開示、サブリース、経過措置などがある。さらに、最終基準を2011年内に公表する予定だが、その公表前に再公開草案を公表すべきか判断する必要があるだろう。

本稿は、2011年2月にIFRS Outlook 増刊 第96号「リース期間及び変動支払リース料に関する基準案の簡素化」が刊行された後で両審議会が暫定的に決定した主な内容を要約している。1

今回の暫定的決定によって、リース契約で認識される資産及び負債の測定に関して、より明確な規定や適用ガイダンスが提供されることになる。
  1. 公開草案「リース」、及び公開草案の内容を要約したIFRS Outlook 増刊 第79号「リース会計に関する公開草案の公表」も参照されたい。

リースとリース以外の要素の区別

IASBは公開草案において、借手及び履行義務アプローチを適用する貸手は、リースを含む契約の各構成要素を区別する際に、収益認識プロジェクトで提案されている規定に従う旨を提案していた。具体的には、複数要素契約を別個の履行義務に区別するために収益認識プロジェクトで提案された規定に従い、サービス要素が区別できる場合のみ、サービス要素とリース要素が別個に会計処理されるとしていた。またサービス要素が区別できない場合には、認識中止アプローチを適用している貸手を除き、契約全体がリースとして会計処理されるとしていた。この点について関係者は、リース契約に通常含まれるリース以外の要素は大抵明確に区別できないのではないか、という懸念を表明していた。

両審議会は、リースとリース以外の要素の両方を有する契約に関して、サービス及び履行費用を含む全てのリース以外の要素を、リースとは別個に会計処理することを暫定的に決定した。これにより、リース以外の要素が区別できるのかどうかを検討する必要は無くなる。なお、履行費用という語は公開草案で定義されていないが、現行基準と整合するものであり、(貸手が立替払いする)保険料や維持費、租税公課を含む費用とされている。

両審議会はまた、リースとリース以外の要素の区別にあたり、借手と貸手で異なる規定を用いるべきだとする提案に同意した。貸手は、各構成要素の相対的な売価をもとに契約上の受取額を配分する。一方、借手は、全ての要素の購入価格が識別できる(客観的に決定できる)場合には各構成要素の相対的な購入価格で、一部の要素の購入価格が識別できない場合には残余法(residual method)で支払額を配分する。なお、借手において、どの要素の購入価格も全く識別できない場合には、支払額全額をリースとして会計処理しなければならない(つまり、支払額をリースとリース以外の要素に区分しない)。そして、借手にとって購入価格が識別できるかを判断する方法に関して、適用ガイダンスを設けることが同意された。

公開草案のもとでは要素が区別できないと判断された契約であっても、今回の暫定的決定により、各構成要素が区別されることになるかもしれない。たとえば、小売業者が店舗用土地をリースしており、当該土地に関連して貸手が毎年支払う固定資産税と同額を、小売業者が貸手に支払うケースを検討する。公開草案においては、貸手が提供している明確なサービスではないため、当該支払いがリースと別個に会計処理されることはないと考えられていた。一方で今回の暫定的決定によれば、当該支払いは履行費用とみなされ、リースとは別個に会計処理されることになる。

弊社のコメント
サービス及び履行費用は、現行基準のもとでは最低リース料総額から控除されるが、多くの企業は、あまり意識して当該支払をオペレーティング・リースと区別していなかったものと思われる。というのも、当該支払もオペレーティング・リース料も概ね同じ会計処理(発生した期の損益)になると考えられたからである。今回の暫定的決定により、リースを含む契約を構成する各要素の区別のために、観察可能な価格を識別するプロセスの構築が必要になるかもしれない。
公開草案に対するコメント提供者の多くが、提案内容について実務的に非常に適用しづらいと懸念を表明していたため、両審議会はそうした声に応える形で、多くの論点の内容を明確にし、修正を行った。

その他の確認・修正事項

公開草案からの変更点として、リース契約に含まれる購入オプションの会計処理も挙げられる。リース契約に含まれる購入オプションは、リースを延長するオプションの会計処理と同じ会計処理となる。つまり、もし借手が購入オプションを行使する重要な経済的動機を有しているならば、当該オプションの行使価格はリース料に含まれることになる。そして当該リースの使用権資産は、原資産の経済的耐用年数にわたり償却されることになる。

さらに両審議会は、リースを原資産の実質的な購入/売却契約と区別するという規定を新しいリース基準に設けないことを暫定的に決定した。この決定により、新しいリース基準は公開草案の範囲に含まれていなかった契約(例えば、割安購入オプション付リースや所有権の移転を伴うリース)にも適用されることになる。

公開草案に対するコメント・レターでは、多くの回答者が、リース契約締結時点で資産及び負債を測定し、当該測定額でリース開始日に資産及び負債を認識するという提案について、実務への適用が非常に困難となると懸念していた。両審議会は、リースに関する資産及び負債の当初測定及び割引率の決定がリースの開始日(すなわち貸手が原資産を借手に利用できるようにする日)に行われるよう、公開草案を変更することを暫定的に決定した。そして、リース料を現在価値で当初測定するために使用される割引率に関する規定を明確にするとともに、(親会社あるいは子会社のいずれの追加借入利子率を反映した率を用いるべきか等)公開草案では明確にされなかった特定の状況における割引率の決定についても適用ガイダンスを提供することに同意した。

両審議会はまた、リースの開始日より前に借手に生じた費用やリース料など、様々な項目に対する会計処理を明確にするための適用ガイダンスを設けることに同意した。そして、初期直接費用の定義から「回収可能な(コスト)」という文言を削除することにも同意した。さらに、貸手が借手に与えるリース・インセンティブの会計処理についても取り組み、借手が使用権資産を当初測定する際に、全てのリース・インセンティブを控除することを示した適用ガイダンスを設ける予定である。

短期リースについては、借手及び貸手の双方とも、現行のオペレーティング・リースの会計処理を適用できることが同意された。公開草案では、借手は短期リースについてもリースに関連する資産及び負債を認識しなければならないと提案されていたが、この変更により、企業は、予想される最大の期間が12カ月以内のリースについて、当該資産及び負債を計上せず、損益を定額法で認識するという会計方針を(資産の種類ごとに)選択できることになる。

セール・アンド・リースバック

公開草案では、セール・アンド・リースバック取引(企業が資産を買手に売却するとともに同一資産を買手からリースする取引)は、特定の要件を満たせば売却及びリースのそれぞれの会計処理を行わなければならず、要件を満たさない場合は金融取引として会計処理しなければならない、と提案されていた。

両審議会は、セール・アンド・リースバック取引を売却及びリースとして会計処理するか、または金融取引として会計処理するかは、現在進捗中の収益認識プロジェクトにおける要件に基づいて判断されることを暫定的に同意した。セール・アンド・リースバックに関して、売手(リースの借手)が売却及びリースバックに伴い発生する損益を認識するためには、収益認識基準(案)の上記要件だけが求められ、追加の制約条件が要求されることはない。

弊社のコメント
セール・アンド・リースバック取引について追加的な制約条件を設けないとする両審議会の判断により、当該取引が金融取引と判断されるケースは、公開草案のもとで検討される場合よりも少なくなると想定される。
弊社は、売却取引が実際に生じたかどうかの判断にあたり、収益認識基準(案)で規定される支配要件が適用されるという暫定的決定を評価している。しかし、(購入オプションなどの)リースの特徴によって、売却に関する判断にどのような影響が生じるのかまでは、現段階で明確にされていないと考える。



情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?