アシュアランス
IFRS Outlook

IFRS財団がSECスタッフのIFRSに関する最終報告書の分析を公表

2013.01.11
IFRS Outlook 2013年1月号 (PDF:1,359KB)

米国SECは2012年7月に、「米国の発行企業の財務報告制度へのIFRSの組込みに関する検討のためのワークプラン」に関する最終スタッフ報告書(以下、SECスタッフ報告書)4を公表した。これは、米国の財務報告フレームワークにIFRSを組み込むことに関するSECの検討に対して重要なマイルストーンとなるものである。SECスタッフ報告書を公表した目的は、IFRSを米国の財務報告体系に組み込むべきかどうか、また組み込むのであればどのように行っていくべきか、についてSEC委員の意思決定に資する情報を伝えることであった。

IFRS財団のスタッフ分析「IFRS財団の評議員会に対する報告書-IFRS財団スタッフの分析:SEC最終スタッフ報告書」(IFRS財団報告書)5は、SECスタッフ報告書で議論されている論点をいくつか取り上げている。SECスタッフ報告書で識別された論点には、評議員会の「戦略レビュー」6を経て、すでに対応が完了しているものもあれば、今なお検討中のものもある。IFRS財団スタッフはIFRS財団報告書の中で、IASBの資金調達及び監督に対するSECスタッフの指摘に異議を唱えていた。

IASBとFASBによるコンバージェンス・プログラムの完了が近づく中で、各国の基準設定主体(NSS)との間で、より正式で一体性のある集合的な取決めを開発することが、IASBに求められている。この目的に向けて、会計基準フォーラムが2013年に設置される。IASBにとっては、仮に米国がIFRSの採用にエンドースメント・アプローチを採用するのであれば、会計基準フォーラムへの米国の貢献が非常に重要となることは明らかである。IFRS財団スタッフは、SECスタッフ報告書のいくつかの提言を受け入れ歓迎しつつも、補足説明を加えた上で、ある事例に関しては、SECスタッフの発見事項と所見に異論を唱えている。IFRS財団報告書で取り上げられている主な論点を以下で説明する。

IFRS財団スタッフは、フィードバックへの的確な対応と、不当な政治的影響を受けることとは紙一重であることを認識している。

さらに、モニタリング・ボードの設置、IFRSコミュニティの多様性、及びIASBの国際的かつ職業的に多様化した人員構成は、特定の国や地域、又は特定の利害関係者からの不当な圧力を和らげるのに役立つであろう。

SECスタッフ報告書は、IASBの客観性が外部からの政治的影響力によって損なわれる可能性があるという関係者の懸念に言及している。IFRS財団スタッフは、フィードバックへの的確な対応と、不当な政治的影響を受けることとは紙一重であることを認識している。だが、IFRS財団及びIASBのガバナンス構造を継続的に強化していくことで、その独立性はさらに強固なものとなろう。財団スタッフは、さらに、モニタリング・ボードの設置、IFRSのコミュニティの多様性、及びIASBの国際的かつ職業的に多様化した人員構成が、特定の国や地域、又は特定の利害関係者からの不当な圧力を和らげるのに役立つと考えている。

SECスタッフ報告書は他にも多くの点について懸念を示している。例えば、財団は資金源を大手会計事務所に継続的に依存していること、IFRS財団に資金提供を行っている国は30カ国にも満たないこと、さらに評議員会は、米国に割り当てた資金を調達できていないことが挙げられる。これに対し、IFRS財団スタッフは、財団予算に最も貢献しているのは欧州諸国及び欧州連合(EU)であり、69カ国から資金提供を受けていると説明している。さらに米国からの資金提供が不足しているという問題は、米国当局の問題であり、IFRS財団が何らかの影響力を行使できる問題ではない。

SECスタッフ報告書では、共通支配下の取引の会計処理など多くの分野においてIFRSの規定は限定的であり、保険や採掘産業など特定の業界に関しては全く不十分であると指摘している。IASBは将来のアジェンダ(検討テーマ)に関するコンサルテーションでこれらの分野を識別し、優先順位を設定した。アジェンダコンサルテーション・プロセス、年次改善プロセス及びIFRS解釈指針委員会(委員会)によって、徐々に改善が図られていくことになる。

委員会はより適時に問題に対処できるはずであるというSECスタッフ報告書の指摘に対し、IFRS財団スタッフは、評議員会の戦略レビューの一環として、評議員会が今年のはじめに委員会の効率性及び有効性に関するレビュー7を実施し、2012年5月にそれらを改善するための提言を公表したことに言及している。これらの提言はすでに十分に実施されている。

SECスタッフの提言の1つに、IASBは新しい基準の開発過程で、NSSとの関わりをより強固にすべきであるというものがあった。この提言に対し、IASBはフォーラムを設置し、NSS及び地域団体との関係を強化しつつ、公式なものにし、NSS及び地域団体と共同でさらなる連携が図れるようにするための準備作業を開始した。

SECスタッフ報告書は、単一の1組のグローバルな会計基準による便益を十分に享受するには、IFRSの適用においてさらなる一貫性の確保が重要であると述べている。IFRS財団スタッフもこの点には同意している。仮にSECがIFRSを自国の会計基準に組み込むことを決定した場合、米国における執行は、SECのみがその責任を負うことになり、外部からの圧力によって基準の執行に影響が及ぶ危険性はなくなる、と財団スタッフは考えている。

米国が懸念している事項、すなわち現在の経済情勢下におけるIFRS移行に伴うコスト、並びに財務諸表作成者及び規制当局がIFRSを適用する際の一貫性の程度については、基本的に会計上の論点ではなく、移行過程と規制当局による執行に関連する問題であり、他の国々では成功裡に対応が完了しているものである。

SECスタッフ報告書は、IFRSを米国会計基準に組み込む際の諸問題に触れているが、それらは米国固有のものであり、米国の規制当局が、自身の活動する環境下においてのみ対応できるものである。IFRSを組み込む方法に関し、IFRS財団スタッフは、エンドースメント・アプローチがIFRS採用国の大多数で使われており、それによって国際的なルールが自動的に国内の法律の一部を構成することがないようにするための重要な「国家主権の回路遮断機(sovereign circuit)」になると述べている。IFRSの導入に関して、IFRS財団スタッフは、基準書単位で段階的に導入するアプローチにより、IFRSの導入に成功した国を今のところ確認できていない。当初はこのアプローチを検討していた国でも、代わりに「ビッグバン(一斉適用)」アプローチに従うことを決定した、と財団スタッフは述べている。財団スタッフは、新しい基準の段階的導入によると、長期間を要することとなり、それは財務諸表作成者にとって、技術的に困難であるとともに、非常にコストがかかるだろうと考えている。

IFRS財団スタッフの発見事項によると、他国での経験から、移行にかかるコストは重要ではないとは言えないものの、一般に法外な金額でもないことが示されている。コンバージェンス・プログラムが実施された結果として、IFRSと米国会計基準との間に最終的には多少の差異が残ったとしても、それは僅かなものであり、移行に関連して生じるコストもより低く抑えられることになる。また、新たにコンバージェンスが達成される基準(収益及びリースなど)の適用コストは、米国がIFRSに移行するか、米国会計基準を維持するかに関係なく、米国の財務諸表作成者が負担しなければならないコストである。さらに、IFRS財団が委託した最近の調査によれば、IFRSの採用によりかなりの便益を得られることがわかっているにもかかわらず、そのことがSECスタッフ報告書では省略されていた。

SECスタッフが報告している、IFRS採用に関する複数の課題は、IFRSを採用した国々が何年にもわたりすでに経験してきたものである。IFRS財団ミシェル・プラダ評議員会議長は「本日公表されたIFRS財団スタッフ分析は、すでに自国でIFRSへの移行を完了した国々の経験だけでなく、学術的な研究の側面から、SECスタッフ報告書の発見事項を補完するものであり、IFRSを採用するかどうか、またどのように採用すべきかを検討している他の国々にとっても有用なものとなるはずである。IFRS財団スタッフが実施した分析にも課題はあるものの、米国がIFRSを採用するにあたって克服できない障害はなく、米国はIFRSへの移行において有利な立場にあるのだから、G20首脳により繰り返し確認された目標は達成されるであろう」と述べた。

セグメント報告、公正価値測定及び企業結合といったコンバージェンスが達成された基準が公表されるなど、過去10年間にわたり多大な成果が見られている。我々は、両審議会が収益認識及びリース・プロジェクトの共同作業を今後も進めていくことを歓迎するとともに、両審議会が今後さらに差異を最小限に抑えるよう留意していくことを望む。

セグメント報告、公正価値測定及び企業結合といったコンバージェンスが達成された基準が公表されるなど、過去10年間にわたり多大な成果が見られている。我々は、両審議会が収益認識及びリース・プロジェクトの共同作業を今後も進めていくことを歓迎するとともに、両審議会が今後さらに差異を最小限に抑えることに留意していくことを望む。





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