IPO(企業成長サポート)

2014年新規上場会社概要 (2014年1月~12月)

2015.01.31
戦略マーケッツ事業部 企業成長サポートセンター
マネージャー 公認会計士 中野 圭介

Ⅰ. 2014年の新規上場(IPO)の概況

2014年(1月から12月)に国内株式市場に新規上場(IPO)した会社数は、対前年比22社増加の80社(TOKYO PRO Marketを含む。以下同様。)、このうち新興市場に上場した会社数は対前年比14社増加の59社という結果となりました。

2014年の日本経済は、3月までの消費税増税に伴う駆け込み需要を背景に、家電・自動車等の耐久消費財を中心とした個人消費の拡大や住宅投資の増加がありましたが、4月以降にはその反動減の影響により、個人消費が大きく落ち込み、緩慢な回復傾向となりました。株式市場では、米国の雇用統計の悪化などにより2013年12月には1万6千円台にあった日経平均株価が下落基調となり、4月には1万4千円台で推移するまでに下落しましたが、5月には底を打ち、海外市場の動きや円安などを背景に、9月には1万6千円台を回復しました。さらに、10月31日の日銀の追加金融緩和と、一段の円安を受け、12月には約7年4ヶ月ぶりに一時は1万8千円台へと上昇しました。

このような経済環境においてIPO市場では、5年連続でIPOした会社数が増加し、第4四半期ではIPO社数が40社となり、年間のIPO社数の半数が第4四半期にIPOしています。四半期のIPO社数で40社台となるのは、2007年第1四半期以来となります。中でも12月には28社と年間のIPO社数の35%を占め、極めて高い割合となっている点が特徴的です。

株価については、49社連続で初値が公募価格を上回った2013年には及びませんが、初値が公募価格を上回った会社は59社と2014年も依然として高い割合を維持しており、初値が公募価格の1.5倍以上となった会社も41社でIPO社数の過半数を占めるなど、IPO 市場の人気が依然として高いことがうかがえます。

個別銘柄では、株式会社リクルートホールディングスが1兆8,196億円の時価総額(初値。以下同様。)でIPOしたほか、日立マクセル株式会社、株式会社ジャパンディスプレイ、株式会社西武ホールディングス、株式会社すかいらーく、といった銘柄の時価総額1千億円を超える大型案件のIPO実績がありました。

新興市場では、CYBERDYNE株式会社が種類株式を活用したIPOを行い、注目を集めました。

2015年は90社を超えるIPO社数が予想され、2007年以来8年ぶりに100社を超えることも期待されるとともに、大型銘柄のIPOも注目されています。IPO市場がさらなる活気を帯びることで日本経済の成長を後押しすることが期待されます。

1. 市場別分析

2014年の新規上場会社の市場別動向は表1のとおりです。2014年は全市場合わせて80社のIPO実績がありましたが、そのうち44社がマザーズに上場しています。マザーズの44社という結果は前年と比較して15社の大幅増加となっていますが、最近10年間で最も多く、2004年の56社以来のIPO実績です。また、市場別構成割合についても、マザーズは、2012年に48%、2013年に50%と高い割合を示していましたが、2014年はさらに増加して55%となっています。マザーズに次ぐIPO社数はジャスダックスタンダードの11社です。ジャスダックスタンダードは前年も同数の実績があったため、前年からの増減はありません。新興市場では、この他にTOKYO PRO Marketで3社、名古屋セントレックスでは2008年以来6年ぶりに1社のIPO実績があり、新興市場のIPO実績の合計は、全市場合計の74%を占める59社という結果となりました。

一方、本則市場(既存市場)では、東証1部、東証2部それぞれ10社のIPO実績がありました。前年も東証1部、東証2部ではそれぞれ6社のIPO実績があったため、前年比較ではそれぞれ同数の4社増加となりました。この他に名証2部でも2007年以来7年ぶりのIPO実績がありました。

なお、ジャスダックスタンダードに上場した株式会社東武住販は同日に福岡Qボードに、株式会社ヨシックスは同日に名証2部に上場していますが、両社ともジャスダックスタンダードの上場実績として記載しています。

◆表1 「最近5年間の市場別新規上場会社数の推移」
市場 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2013/2014
増減
東京1部 4 2 2 6 10 4
東京2部 2 7 5 6 10 4
大阪2部 0 0 0 0 0 0
名古屋2部 0 0 0 0 1 1
福岡 0 0 0 1 0 △1
マザーズ 6 11 23 29 44 15
ジャスダックスタンダード 2 13 14 11 11 0
ジャスダックグロース 0 3 0 1 0 △1
ジャスダック 7
ヘラクレススタンダード 0
ヘラクレスグロース 0
ジャスダックNEO 1
名古屋セントレックス 0 0 0 0 1 1
札幌アンビシャス 0 0 1 0 0 0
福岡Qボード 0 0 1 0 0 0
TOKYO PRO Market 0 1 2 4 3 △1
① 全市場合計 22 37 48 58 80 22
② ①の内で新興市場合計 16 28 41 45 59 14
(②/①比率) 72.7% 75.7% 85.4% 77.6% 73.8%  
(注1)大阪1部、名古屋1部、札幌本則は上記期間内における新規上場実績はありません。
(注2)株式会社東京証券取引所は2012年7月1日付で株式会社TOKYO AIM取引所を吸収合併し、プロ投資家向け株式市場「TOKYO AIM」を「TOKYO PRO Market」と改称しています。
(注3)2014年のIPO実績で、ジャスダックスタンダードと福岡Qボードに同日に上場した(株)東武住販と、ジャスダックスタンダードと名証2部に同日に上場した㈱ヨシックスはジャスダックスタンダードの上場実績として記載しています。

2. 業種別分析

2014年の業種別新規上場会社の状況は表2のとおりです。2014年は情報・通信業で2007年以来7年ぶりに20社台となる24社がIPOし、全体の30%を占めました。これに次ぐIPO実績はサービス業の18社で、2012年と2013年はサービス業が最も多く、情報・通信業がそれに続いていましたが、2014年はそれが逆転している点が特徴的です。最近3年間は、例年IPO実績のある小売業、情報・通信業、サービス業の3業種で全業種の65%を占め、高い構成割合となる傾向が続いています。

また、繊維製品では、2004年の株式会社クラウディア以来10年ぶりに、株式会社はかた匠工芸が TOKYO PRO Market に IPO しています。

◆表2 「最近3年の業種別新規上場会社数の推移」
   2012年 2013年 2014年
会社数 シェア 会社数 シェア 会社数 シェア
建設業 0 4 6.9% 0
食料品 3 6.3% 2 3.4% 2 2.5%
繊維製品 0 0 1 1.3%
パルプ・紙 1 2.1% 0 0
化学 1 2.1% 2 3.4% 4 5.0%
医薬品 2 4.2% 3 5.2% 2 2.5%
鉄鋼 0 1 1.7% 0
機械 1 2.1% 1 1.7% 1 1.3%
電気機器 1 2.1% 0 3 3.8%
輸送用機器 0 1 1.7% 0
精密機器 0 1 1.7% 1 1.3%
その他製品 0 0 2 2.5%
電気・ガス業 0 0 2 2.5%
陸運業 0 1 1.7% 2 2.5%
空運業 1 2.1% 0 0
倉庫・運輸関連業 1 2.1% 0 0
情報・通信業 10 20.8% 11 19.0% 24 30.0%
卸売業 2 4.2% 2 3.4% 0
小売業 7 14.6% 8 13.8% 10 12.5%
銀行業 0 1 1.7% 0
証券、商品先物取引業 0 0 2 2.5%
保険業 1 2.1% 0 2 2.5%
その他金融業 1 2.1% 0 0
不動産業 2 4.2% 3 5.2% 4 5.0%
サービス業 14 29.2% 17 29.3% 18 22.5%
合計 48 100.0% 58 100.0% 80 100.0%
(注)水産・農林業、鉱業、石油・石炭製品、ゴム製品、ガラス・土石製品、非鉄金属、金属製品、海運業は上記期間内におけるIPO実績はありません。

Ⅱ. 2014年 新興市場上場の傾向

ここからは、2014年において新興市場に上場した会社59社の財務データや時価総額、従業員数、資金調達の状況についてより詳細に分析を行っていきます。
なお、札幌アンビシャス、名古屋セントレックス、福岡Qボード、TOKYO PRO Market(TOKYO AIM)は、表中の「その他」に含めて記載しています。また、ジャスダックはジャスダックスタンダード及びジャスダックグロースをまとめて記載しています。

1. 新興市場59社の売上高


① 分布状況
(単位:社)
  売上高
50億円未満
50~100億円 100~200億円 200~500億円 500億円以上
マザーズ 38 2 2 2 0
ジャスダックスタンダード 5 4 1 1 0
ジャスダックグロース 0 0 0 0 0
その他 4 0 0 0 0
合計 47 6 3 3 0
シェア 80% 10% 5% 5% 0%
2013年シェア 69% 18% 9% 4% 0%

② 平均
(単位:百万円)
  マザーズ ジャスダック その他
2012年 ??????? 3,810 ?????? 14,924 ??????? 1,378
2013年 ??????? 4,350 ??????? 6,490 ?????????? 680
2014年 ??????? 3,435 ??????? 7,338 ?????????? 725

③ 最大最小分析
(単位:百万円)
上位5社下位5社
社名 市場名 売上高 社名 市場名 売上高
(株)ホットマン ジャスダック(S) 22,931 (株)クラウドワークス マザーズ 51
(株)ムゲンエステート マザーズ 20,830 (株)リボミック マザーズ 151
(株)ホットランド マザーズ 20,588 (株)はかた匠工芸 TOKYO PRO Market 206
(株)U-NEXT マザーズ 17,897 (株)イー・カムトゥルー TOKYO PRO Market 246
イーレックス(株) マザーズ 15,311 CYBERDYNE(株) マザーズ 286
ジャスダック(S):ジャスダックスタンダード
(注)連結財務諸表作成会社は連結売上高を、連結財務諸表を作成していない会社は単体売上高を集計しています。

2014年に新興市場にIPOした会社59社のうち、80%を占める47社が売上高50億円未満の会社でその8割がマザーズにIPOした会社です。2013年と2012年は売上高50億円未満の会社が7割程度を占めていましたが、2014年はその割合がさらに増加しており、新興市場にIPOする会社の売上規模の小型化が進んでいます。

市場別の平均売上高では、マザーズの平均売上高が2012年、2013年と比較して減少している一方、ジャスダックでは2013年より増加しており、ジャスダックはマザーズの2倍の規模となっています。

しかし、最大最小分析において、従来は、上位5社をジャスダックにIPOした会社で占められましたが、昨年に引き続き、2014年も4社がマザーズです。幅広い規模のIPO実績がある点がジャスダックの特徴でしたが、幅の広さという点においてはマザーズとの相違は無くなりつつあります。

2. 新興市場59社の時価総額


① 分布状況
(単位:社)
  時価総額
20億円未満
20~50億円 50~100億円 100~500億円 500億円以上
マザーズ 0 3 10 29 2
ジャスダックスタンダード 1 2 5 3 0
ジャスダックグロース 0 0 0 0 0
その他 4 0 0 0 0
合計 5 5 15 32 2
シェア 8% 8% 25% 54% 3%
2013年シェア 9% 18% 27% 40% 7%

② 平均
(単位:百万円)
  マザーズ ジャスダック その他
2012年 ??????? 9,511 ??????? 3,593 ?????????? 747
2013年 ?????? 19,502 ?????? 17,773 ?????????? 613
2014年 ?????? 18,336 ??????? 8,321 ?????????? 590

③ 最大最小分析
(単位:百万円)
社名 市場名 時価総額 社名 市場名 時価総額
CYBERDYNE(株) マザーズ 92,362 (株)イー・カムトゥルー TOKYO PRO Market 226
アキュセラ・インク マザーズ 81,931 (株)はかた匠工芸 TOKYO PRO Market 269
(株)イグニス マザーズ 49,224 中央インターナショナルグループ(株) TOKYO PRO Market 827
(株)フリークアウト マザーズ 42,129 日本PCサービス(株) 名古屋セントレックス 1,039
(株)VOYAGE GROUP マザーズ 37,159 (株)東武住販 ジャスダック(S)
福岡Qボード
1,781
ジャスダック(S):ジャスダックスタンダード
(注)時価総額は、初値に基づいて算出しています。

2014年に新興市場にIPOした会社59社のうち、時価総額(初値)が100億円以上の会社が58%(34社)となり、高いPERを背景に、前年の47%からさらに11%増加しています。また、時価総額が500億円以上となった会社も2社ありました。一方で、時価総額が50億円未満の会社は17%(10社)と前年より10%低下しています。前年は初値が公募価格を上回る会社が続出し、平均で公募価格の2.5倍の初値がついていましたが、2014年もTOKYO PRO Marketの3社を除いた56社中52社は初値が公募価格を上回って平均で公募価格の2.3倍の初値がついたこともあり、前年に引き続き、初値ベースでの時価総額の水準が高くなる結果となりました。

市場別の平均を見ると、マザーズは前年比では減少したものの、引き続き高い水準となっています。ジャスダックは前年の平均金額が株式会社リプロセルの時価総額1,477億円によって大きく上昇していたため、前年比では減少という結果になりました。



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