IPO(企業成長サポート)

関連法令等の改正

2015.08.13
企業成長サポートセンター
シニアパートナー 公認会計士 小野 淳史

Ⅰ. IPO活性化に向けた政府の施策

金融庁金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」において、平成25年6月より新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等が検討・審議され、同年12 月に報告書が公表されました。

当該報告書には、新規・成長企業に対するリスクマネーの供給促進を図る観点からは、新規上場が視野に入った新規・成長企業の上場に係る障壁をできるだけ低くする施策も重要であるとして、当該観点に関する具体的な施策も盛り込まれています。

今回は、その中でも特に重要な施策である内部統制監査の免除が盛り込まれた改正金融商品取引法が5月29日に施行されましたので、あらためて具体的な施策の全体像と各施策の現状を報告します。

Ⅱ. 報告書に記載された具体的な施策

ワーキング・グループでは、新規上場を促進する観点から、新規上場に伴う負担の軽減および新興市場の新規上場時における最低株主数基準の引下げについて検討を行い、報告書において以下の具体的な施策を記載しました(報告概要の文言をそのまま記載しています)。

1. 新規上場に伴う負担の軽減

  1. 新規上場時に開示が必要な財務諸表を過去5年分から過去2年分に軽減
  2. 新規上場後3年間に限り、「内部統制報告書」に対する公認会計士監査を免除

2. 新興市場の最低株主数基準の引下げ

新興市場における新規上場を推進していく観点から、最低株主数基準を引下げ

Ⅲ. 具体的な施策に対する現在までの対応

Ⅱに記載した具体的な施策について、現在までの実施状況は以下の通りです。

1. 新規上場に伴う負担の軽減

(1) 新規上場時の負担の軽減(有価証券届出書における開示期間の短縮)

  1. 「特別情報」に関する軽減
    上場時に提出する有価証券届出書(第二号の四様式)の「特別情報」に記載が求められていた提出会社と連動子会社の最近5事業年度の財務諸表の記載については、平成26年8月に開示府令及び監査証明府令が改正・施行され、提出会社の財務諸表の記載が不要となりました。従って、「特別情報」には、連動子会社の財務諸表のみが記載されることになりましたが、連動子会社の財務諸表の開示期間についても、最近5 事業年度から最近2 事業年度に短縮されました(開示府令第二号の四様式(記載上の注意)(22))。
  2. 「主要な経営指標等の推移」(ハイライト情報)に関する軽減
    「主要な経営指標等の推移」(ハイライト情報)の記載に関しては、連結財務諸表について最近5連結会計年度から最近2 連結会計年度への開示期間の短縮が図られましたが、個別財務諸表の開示期間の短縮は行われませんでした。ただ、最近2 事業年度以外については、会社計算規則に基づく数値により記載することができるとの実務的な軽減規定が設けられました(開示府令第二号の四様式(記載上の注意)(11)a、b)。
  3. 「経理の状況」および「業績等の概要」に関する軽減
    指定国際会計基準(IFRS)を適用して上場する場合(※)について、従来は、連結財務諸表をIFRS で作成する場合、「経理の状況」において、比較情報を含む最近2 連結会計年度の連結財務諸表(すなわち3 期分)の開示が必要でしたが、有価証券届出書に添付される監査報告書において監査証明府令第4条第2項の規定による記載(比較情報に関する事項)がある場合には、比較情報を含む最近連結会計年度に係る連結財務諸表(すなわち2期分)の開示とすることができると規定されました(開示府令第二号の四様式( 記載上の注意)(12))。
    さらに、上場会社がIFRSを適用する場合、「業績等の概要」で日本基準による要約連結財務諸表の記載が必要ですが、上場後初めて提出する有価証券届出書に限り記載を省略できると規定されました(開示府令第二号様式(記載上の注意)(30)d)。
    ※ 指定国際会計基準(IFRS)を適用した上場は、平成25年10月に連結財務諸表規則が改正され、IFRS適用要件から「上場」が削除されたことにより可能となりました。

(2) 新規上場後の負担の軽減

上場後に経営者が作成する内部統制報告書については、監査法人または公認会計士の監査を受ける必要がありますが、金融商品取引法が改正され、上場後3年の間に提出する内部統制報告書について、監査法人または公認会計士による監査の免除を選択できると規定されました(金融商品取引法第193条の2第2項第4項)。3年間の起算日は、上場日(事業年度開始後3カ月以内の日である場合には、事業年度開始後3カ月を経過した日)となります(金融商品取引法施行令第35 条の3)。

なお、免除規定の適用は、改正法の施行日(平成27年5月29日)後に上場する会社はもちろん、上場後初めて提出する内部統制報告書の提出期限が施行日現在到来していない会社(すでに提出した会社は除く)であれば適用することができます(附則第6条)。例えば、決算日が平成27年3月31日である会社が、同年2月に上場した場合でも、上場後初めて提出する内部統制報告書の提出期限は6月末であり施行日後であるため、免除規定を適用することができます。

しかし、新規上場企業であっても、その規模などに照らして、市場への影響や社会・経済的影響が大きいと考えられる企業、すなわち、上場日の属する事業年度の直前事業年度の資本金の金額が100億円以上または負債の金額が1,000億円以上の会社は適用できません(内部統制府令第10 条の2)。

2. 新興市場の最低株主数基準の引下げ

(株)東京証券取引所は、ワーキング・グループの報告書を受けて、マザーズ、JASDAQスタンダードおよびJASDAQグロースの新規上場時の株主数基準を、300人以上から200人以上に変更しました(平成26年3月31日より施行)。

また、他の取引所でも、(株)名古屋証券取引所が、セントレックスの新規上場時の株主数基準を、同様に300人以上から200人以上に変更しました(平成26年3月31日より施行)。

※ 本文中で用いている略語は以下を指します。

  • 開示府令
    企業内容等の開示に関する内閣府令
  • 監査証明府令
    財務諸表等の監査証明に関する内閣府令
  • 連結財務諸表規則
    連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
  • 内部統制府令
    財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令


情報量は適当ですか?

文章はわかりやすいですか?

参考になりましたか?