IPO(企業成長サポート)

日本の新規上場動向 - 2015年1月~6月

2015.09.09
企業成長サポートセンター 公認会計士 松川由紀子

1. 新規上場市場の概況

2015年上半期(1月~6月)の国内株式市場は、4月22日に日経平均株価の終値が15年ぶりに20,000円台を回復し、6月24日には2000年4月に付けたITバブル期の高値20,833円を超えて1996年12月以来18年半ぶりの高値をつけるなど、堅調に推移しました。そのような市場環境の中で、新規上場企業数は、6年連続増加の45社(TOKYO PRO Marketを含む。以下同様)という高い水準となり、上半期に限ってみると、年間実績が80社となった前年上半期の26社よりも19社早いペースです。市場別に見ると、全体の7割近い31社がマザーズに上場しており、新興市場合計では9割を超えています(表1)。

一方で、上場直後の経営者による不適切な取引の発覚や、上場時に公表した業績予想が短期間で大幅に下方修正されるなど、投資家の信頼を損ねる事例も散見されました。日本取引所グループの最高経営責任者が3月31日の定例記者会見において、「成長企業への円滑な資金供給に水を差す事態であり看過することはできない」と発言し、証券会社と監査法人に対して、IPO審査の厳格化を要請するという異例の事態に発展しています。

ただ現状では、当該事態が上場市場に与える影響は限定的と考えられます。前年と同様に上半期よりも下半期の新規上場企業数が多い場合、年間の新規上場企業数が100社を超える可能性も出てきました。

◆表1 最近5年間の1月~6月の市場別新規上場企業数
(単位:社)
市場 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 (参考)
2014年
1月-6月 1月-6月 1月-6月 1月-6月 1月-6月 1月-12月
東証 1部 1 0 3 5 1 10
東証 2部 4 0 3 3 3 10
名証 2部 0 0 0 1 0 1
マザーズ  2 7 8 10 31 44
ジャスダックスタンダード 6 9 5 7 7 11
ジャスダックグロース 0 0 1 0 0 0
名証セントレックス 0 0 0 0 0 1
札証アンビシャス 0 1 0 0 1 0
TOKYO PRO Market 0 1 1 0 2 3
① 全市場
合計
13 18 21 26 45 80
② ①の内で新興市場合計 8 18 15 17 41 59
(②/ ①比率) 61.5% 100.0% 71.4% 65.4% 91.1% 73.8%
(注1)対象期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注2)東京証券取引所は2012年7月にTOKYO AIM取引所を吸収合併し、「TOKYO AIM」を「TOKYO PRO Market」と改称しています。
(注3)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。

2. 新規上場企業データの分析

(1) 業種

最近3年間の上半期(1月~6月)における新規上場企業数を業種別に集計した結果が表2です。2015年上半期は、情報・通信業12社、サービス業10社、小売業7社の順に多く、これら3業種で全体の6割以上を占めています。2013年、2014年も上記の3業種が多く、同様の傾向が続いています。

◆表2 最近3年間の1月~6月の業種別新規上場企業数の推移
  2013年 2014年 2015年
社数 シェア 社数 シェア 社数 シェア
水産・農林業 0 - 0 - 1 2.2%
建設業 2 9.5% 0 - 1 2.2%
食料品 1 4.8% 0 - 0 -
化学 1 4.8% 3 11.5% 0 -
医薬品 2 9.5% 1 3.8% 2 4.4%
金属製品 0 - 0 - 1 2.2%
機械 1 4.8% 0 - 3 6.7%
電気機器 0 - 3 11.5% 0 -
輸送用機器 1 4.8% 0 - 0 -
精密機器 0 - 1 3.8% 1 2.2%
その他製品 0 - 0 - 1 2.2%
陸運業 1 4.8% 2 7.7% 0 -
情報・通信業 5 23.8% 5 19.2% 12 26.7%
卸売業 1 4.8% 0 - 1 2.2%
小売業 4 19.0% 3 11.5% 7 15.6%
証券・商品先物取引業 0 - 0 - 1 2.2%
保険業 0 - 1 3.8% 0 -
不動産業 0 - 2 7.7% 4 8.9%
サービス業 2 9.5% 5 19.2% 10 22.2%
合計 21 100.0% 26 100.0% 45 100.0%

(2) 本社所在地

最近3年間の上半期(1月~6月)における新規上場企業数を本社所在地別に集計した結果が表3です。2015年上半期も依然として東京都が中心であり、29社と全体の6割以上を占めています。次いで大阪府と愛知県が各4社、北海道が3社でした。東京都以外に本店所在地がある場合でも上場市場は東証に集中しています。東証以外では、東証に同日上場した場合を除くと、札証(アンビシャス)が1社のみでした。

◆表3 最近3年間の1月~6月の地域別新規上場企業数の推移
  2013年 2014年 2015年
社数 シェア 社数 シェア 社数 シェア
北海道 0 - 0 - 3 6.7%
宮城県 0 - 1 3.8% 0 -
茨城県 0 - 2 7.7% 0 -
埼玉県 0 - 1 3.8% 0 -
東京都 9 42.9% 16 61.5% 29 64.4%
神奈川県 2 9.5% 0 - 2 4.4%
山梨県 1 4.8% 0 - 0 -
愛知県 1 4.8% 1 3.8% 4 8.9%
三重県 1 4.8% 0 - 0 -
京都府 0 - 1 3.8% 1 2.2%
大阪府 3 14.3% 0 - 4 8.9%
兵庫県 0 - 0 - 1 2.2%
和歌山県 0 - 1 3.8% 0 -
広島県 1 4.8% 1 3.8% 0 -
山口県 0 - 1 3.8% 0 -
香川県 1 4.8% 0 - 0 -
福岡県 0 - 0 - 1 2.2%
鹿児島県 1 4.8% 0 - 0 -
沖縄県 1 4.8% 0 - 0 -
海外 0 - 1 3.8% 0 -
合計 21 100.0% 26 100.0% 45 100.0%

(3) 売上高

表4は、最近3年間の上半期(1月~6月)における新規上場企業の上場直前期売上高の分布を示しています。2015年上半期は、売上高10億円未満の企業が11社(24%)、10億円以上50億円未満の企業が20社(44%)であり、全体の7割近くを売上高50億円未満の比較的小規模な企業が占めています。2014年上半期には株式会社西武ホールディングスの4,592億円(2013年3月期)を筆頭に売上高が1,000億円を超える新規上場企業が4社ありましたが、2015年上半期は、売上高トップでも、6月25日に上場した㈱メニコンの622億円(2014年3月期)にとどまっています。なお、新興市場(TOKYO PRO Marketを除く)の上場企業1社当たりの売上高の平均は418億円であり、2014年(1月から12月)の417億円と同程度となっています。

◆表4 最近3年間の1月~6月の新規上場企業・直前期売上高の分布
  2013年 2014年 2015年
社数 シェア 社数 シェア 社数 シェア
10億円未満 6 28.6% 3 11.5% 11 24.4%
10億円以上
50億円未満
4 19.0% 10 38.5% 20 44.4%
50億円以上
100億円未満
3 14.3% 4 15.4% 8 17.8%
100億円以上
200億円未満
3 14.3% 1 3.8% 3 6.7%
200億円以上
500億円未満
2 9.5% 3 11.5% 2 4.4%
500億円以上 3 14.3% 5 19.2% 1 2.2%
合計 21 100.0% 26 100.0% 45 100.0%

(4) 初値時価総額

表5は、最近3年間の上半期(1月~6月)における新規上場企業の初値時価総額の分布を示しています。2015年上半期は、50億円から100億円の企業が17社(38%)と最も多く、50億円未満の企業も12社(27%)ありました。2014年上半期は500億円を超えた企業が6社ありましたが、2015年上半期は3社(6%)にとどまっています。2015年の3社のうち1社は東証1部、2社はマザーズ上場の企業です。売上高と同様に、初値時価総額でも、2014年上半期と比較して2015年上半期は大規模な上場が少ないという結果となりました。ただし、2014年上半期は初値が公開価格を下回った企業が7社ありましたが、2015年上半期は43社中3社(TOKYO PRO Marketの2社を除く)に減少しました。

◆表5 最近3年間の1月~6月の新規上場企業・初値時価総額の分布
  2013年 2014年 2015年
社数 シェア 社数 シェア 社数 シェア
50億円未満 5 23.8% 3 11.5% 12 26.7%
50億円以上
100億円未満
3 14.3% 5 19.2% 17 37.8%
100億円以上
200億円未満
8 38.1% 9 34.6% 9 20.0%
200億円以上
500億円未満
3 14.3% 3 11.5% 4 8.9%
500億円以上 2 9.5% 6 23.1% 3 6.7%
合計 21 100.0% 26 100.0% 45 100.0%

2015年上半期新規上場企業の各種データは添付の表6をご覧ください。



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