IPO(企業成長サポート)

日本の新規上場動向 - 2015年1月~9月

2015.10.30
企業成長サポートセンター 公認会計士
松川 由紀子

1. 新規上場市場の概況

2015年1月~9月の国内株式市場は、4月22日に日経平均株価の終値が15 年ぶりに20,000 円台を回復し、6月24日には2000 年4月に付けたITバブル期の高値20,833 円を超えて1996年12月以来18年半ぶりの高値をつけるなど、上半期は堅調に推移しましたが、その後、中国経済の減速懸念などから20,000 円を割り、9月29日には終値で16,930 円まで下落しました。そのような市場環境の中で、新規上場企業数は、6年連続増加の66 社(TOKYO PRO Market を含む。以下同様)という高い水準となりました。前年同期(2014年1月~9月)と比較した場合、26 社増加しています。市場別に見ると、全体の65%にあたる43社がマザーズに上場しており、新興市場合計で全体の9割近くを占めています(表1)。また、7月~ 9月の3か月間で比較した場合、2015年7月~ 9月は21社あり、前年同期14社に比べ7社増加しています。

一方で、上場直後の経営者による不適切な取引の発覚や、上場時に公表した業績予想が短期間で大幅に下方修正されるなど、投資家の信頼を損ねる事例も散見され、日本取引所グループが、証券会社と監査法人に対して、IPO 審査の厳格化を要請するという事態が生じました。

ただし、2015年9月までの上場実績を見ると、当該事態が上場市場に与える影響は限定的と考えられます。2015年11月には日本郵政(株)、(株)ゆうちょ銀行、(株)かんぽ生命保険の郵政3社の大型上場も控えており、今後もIPO 市場の活況が予測されます。

2. 新規上場企業データの分析

業種別では、サービス業16社、情報・通信業15社、小売業10社の順で多く、例年上場企業数の多いこれら3業種で全体の6割以上を占めています。次いで多いのは建設業と不動産業で、それぞれ5社の実績がありました(表2)。

表1 最近5年間の1月~9月の市場別新規上場企業数
市場 2011年1月~9月 2012年1月~9月 2013年1月~9月 2014年1月~9月 2015年1月~9月 (参考)2014年
1月~12月
東証1部 1 1 5 5 2 10
東証2部 4 0 4 4 6 10
名証2部 0 0 0 1 0 1
福証本則 0 0 1 0 0 0
マザーズ 5 12 13 20 43 44
JASDAQスタンダード 8 10 5 8 9 11
JASDAQグロース 1 0 1 0 0 0
名証セントレックス 0 0 0 0 0 1
福証Qボード 0 0 0 0 1 0
札証アンビシャス 0 1 0 0 1 0
TOKYO PRO? Market 1 2 3 2 4 3
①全市場合計 20 26 32 40 66 80
②①の中で新興市場合計 15 25 22 30 58 59
(②/①比率) 75.00% 96.20% 68.80% 75.00% 87.90% 73.80%
(注1)対象期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注2)東京証券取引所は2012年7月にTOKYO AIM取引所を吸収合併し、「TOKYO AIM」を「TOKYO PRO Market」と改称しています。
(注3)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。

本社所在地別では、全体の67%にあたる44社の本店所在地が東京都であり、依然として東京都が中心です。次いで愛知県5社、大阪府4社、北海道3社でした(表3)。東京都以外に本店所在地がある場合でも上場市場は東証に集中しています。東証以外では、東証に同日上場した場合を除くと、札証(アンビシャス)と福証(Qボード)で、それぞれ1社のみでした(表2)。

直前期の売上高の分布を見ると、10億円未満の企業が15社(23%)、10億円以上50億円未満の企業が31社(47%)であり、全体の7割を売上高50億円未満の比図1 2015年1月~9月新規上場企業・直前期売上高図2 2015年1月~9月新規上場企業・初値時価総額較的小規模な企業が占めています(図1)。前年同期には(株)西武ホールディングスの4,592億円(2013年3月期)を筆頭に、売上高が1,000億円を超える新規上場企業が4 社ありましたが、2015年1月~9月の実績では、売上高トップでも(株)ラクト・ジャパンの965 億円(2014年11月期)にとどまっています。なお、新興市場(TOKYO PRO Marketを除く。)に限ると、78%が売上高50億円未満の企業であり、前年同期の71%からその割合が若干増加し、1社当たりの売上高も40億円と、前年同期の52億円と比較して減少しました。初値時価総額の分布を見ると、50億円以上100億円未満の企業が23社(35%)と最も多く、次いで50 億円未満の企業が21 社(32%)ありました(図2)。前年同期は500 億円を超えた企業が6 社ありましたが、2015年1月~ 9月は4社(6%)にとどまっています。4社の市場別内訳は東証1部2社、マザーズ2社です。また、新興市場の平均時価総額は124億円と、前年同期の198億円と比較して減少しました。

2015年1~9月の新規上場企業別の各種データは次ページ以降の表4をご覧ください。

表2 2015年1月~9月の業種別新規上場企業数
  社数 シェア
水産・農林業 1 1.5%
建設業 5 7.6%
化学 1 1.5%
医薬品 2 3.0%
金属製品 1 1.5%
繊維 3 4.5%
精密機器 2 3.0%
その他製品 2 3.0%
情報・通信業 15 22.7%
卸売業 2 3.0%
小売業 10 15.2%
証券・商品先物取引業 1 1.5%
不動産業 5 7.6%
サービス業 16 24.2%
合計 66 100.0%

表3 2015年1月~9月の地域別新規上場企業数
  社数 シェア
北海道 3 4.5%
東京都 44 66.7%
神奈川県 2 3.0%
長野県 1 1.5%
静岡県 1 1.5%
愛知県 5 7.6%
京都府 1 1.5%
大阪府 4 6.1%
兵庫県 1 1.5%
広島県 1 1.5%
徳島県 1 1.5%
福岡県 1 1.5%
熊本県 1 1.5%
合計 66 100.0%

図1 2015年1月9月新規上場企業直前期売上高

図2 2015年1月9月新規上場企業・初値時価総額



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