関係法令等の改正の概況
平成28年4月~9月に公表された、主な関係法令等の改正の状況は、表1及び表2のとおりです。
特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)の割り当てをする場合の開示制度上の法令等の改正のほか、平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱いが主な内容です。
1. リストリクテッド・ストック
(1)概要
「日本再興戦略」改訂2015において、コーポレートガバナンスの強化に関する施策の一環として、経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう株式による報酬、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とするための仕組みの整備等を図ることとされました。
リストリクテッド・ストックは、一定期間の譲渡制限が付された現物株式を役員等に報酬として付与するもので、譲渡制限期間中は当該役員等のリテンション効果があるとともに、株主目線の経営を促す効果があるとされています。
(2)税制改正
平成28年度税制改正においては、役員給与等に係る税制の整備として、①役員へ付与した一定の要件を満たすリストリクテッド・ストックを法人税法上、損金算入の対象となる事前確定届出給与の対象とする等の制度整備、②利益連動給与の算定指標の範囲等について明確化を行う等の措置が講じられました。
(3)会社への課税
リストリクテッド・ストックは、役員等による役務提供の対価として生じる金銭報酬債権の現物出資により発行され、譲渡制限が解除された日に属する事業年度において役務提供に係る費用の額として金銭報酬債権の額が損金算入されます。そのため、譲渡制限解除日の属する事業年度までは、会計上は費用計上する株式報酬費用を、税務上は加算(留保)することとなります。
(4)役員等への課税
役員等へのリストリクテッド・ストックの交付に係る経済的利益については、株式交付日ではなく、譲渡制限解除日にその日における価額により課税されます。
(5)開示制度上の取扱い
株式報酬としてリストリクテッド・ストックの割り当てをする場合には、第三者割当の定義から除外され、有価証券届出書における「第三者割当の場合の特記事項」として、個人の住所や割当株式数等の開示が不要とされました。
2. 平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い
平成28 年度税制改正において、平成28 年4 月1 日以後に取得する建物附属設備及び構築物の税務上の減価償却方法について定率法が廃止され、定額法のみとなりました。
固定資産の減価償却に関しては、日本公認会計士協会から公表されている監査上の取扱いにおいて、いわゆる税法基準による会計処理が一定の範囲で認められています。
しかし、この税制改正に対応して、企業が会計上の減価償却方法を変更する場合、正当な理由に基づく自発的な会計方針の変更として扱うとすれば、変更の適時性と適切性を企業が判断することとなり、実務に混乱が生じるなどの市場関係者からの要請がありました。
そこで、従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理している企業がこの税制改正に合わせて会計方針を変更する場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うものとしたものであり、今回に限られた対応とされています。
区分 | 主な法令等 | 適用時期 | 内容 |
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区分 | 会計基準等 | 適用時期 | 内容 |
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減価償却 (ASBJ) |
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修正国際基準 (ASBJ) |
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修正国際基準 (ASBJ) |
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