IPO(企業成長サポート)

関連法令等の改正

2017.04.20
企業成長サポートセンター マネージャー 公認会計士
中野 圭介

関係法令等の改正の概況

2017年1月~3月に公表された、会計や開示、その他IPOに関連する主な関係法令等の改正の状況は、表のとおりです。

2017年3月29日に企業会計基準委員会(ASBJ)から「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」が公表されています。また、2016年4月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告での提言をふまえ、2017年2月14日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」が、2017年2月10日に東京証券取引所の「有価証券上場規程」が改正されています。

さらに、東京証券取引所から、2016年12月2日に「MBO後の再上場時における上場審査について」が公表され意見募集を行った結果について2017年1月31日に「提出された意見とそれに対する考え方」として公表されています。

1. MBO後の上再場時における上場審査について

(1) 概要

MBOを実施して上場廃止となった会社が、再度上場しようとする場合には、通常の上場審査に加えた追加的な審査が実施されています。しかし、今後、審査案件が増加していく可能性があることから、上場審査の視点・運用について再整理し、更に追加的な考慮を要する案件が生じる可能性に備えるため、「MBO後の再上場時における上場審査について」が公表され、意見募集が行われました。

MBOは、株主から経営を付託された経営者が自ら株主との間で利益相反を引き起こす取引であることや、経営者が株主と比べ大きく情報優位に立つ取引です。そのため、MBOを行う場合には、公正な手続きによりプレミアム配分の適切性やMBO実施の合理性を確保するために、上場ルールで必要かつ十分な開示を求められています。また、再上場時にはMBO時の計画とMBO後の進捗との間のかい離が明らかになることから、MBOと再上場との関連性や、改めてプレミアム配分の適切性やMBO実施の合理性が問われることがあります。

このような背景から、再上場時の上場審査の視点・運用の再整理が行われました。

(2) 上場審査の視点

① MBOと再上場の関連性

MBOと再上場はそれぞれ独立した行為であり、両者の間に必ずしも高い関連性があるとは限らないため、上場審査では、主導者(経営者・株主)の同一性・連続性、MBOから再上場までの期間の長短などが確認されます。

② プレミアム配分の適切性・MBO実施の合理性

プレミアム配分の適切性やMBO実施の合理性を一義的・客観的に判定することはできないものの、MBO時に株主の判断の前提となる手続きが公正に行われた上でMBOが成立していれば、大多数の株主が納得して取引に応じたものということができ、プレミアム配分の適切性やMBO実施の合理性を問う必要性は低いと考えられます。このため、上場審査では、MBO時の手続きのMBO指針への準拠性などが確認されます。

また、再上場時から見て、MBO時の計画とMBO後の進捗との間にかい離がある場合であっても、再上場時にその理由について合理的に説明することができるのであれば、プレミアム配分の適切性やMBO実施の合理性を問う必要性は低いと考えられます。このため、上場審査では、MBO時の計画とMBO後の進捗とのかい離についての説明が十分に説得力があるものかどうかなどが確認されます。

2. マイナス金利の取扱い

マイナス金利の取扱いとして、ASBJから「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」が公表されました。退職給付債務等の計算における割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りがマイナスとなる場合、利回りの下限としてゼロを利用する方法と、マイナスの利回りをそのまま利用する方法の、いずれかの方法によることとされています。

なお、この公開草案では触れられていませんが、資産除去債務、減損損失の回収可能価額、金融商品の時価開示に適用する割引率としては、割引率の下限をゼロとすることが認められているわけではないと考えられますので注意が必要です。

<表>
区分 主な法令等 適用時期 内容
金融庁
  • 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等
  • 2017年2月14日公表
  • 2017年3月31 日以後終了事業年度の有価証券報告書から適用
  • 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告の提言を踏まえ、有価証券報告書の記載内容に「経営方針」を加えるためのもの
ASBJ
  • 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)
  • 2017年3月16日公表
  • 公表日(2017年3月16日)以後適用
  • 表現の見直しや考え方の整理を行ったものであり、実質的な変更はない
  • 「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」(実務対応報告第34号)
  • 2017年3月29日公表
  • 2017年3月31日に終了する事業年度から2018年3月30日に終了する事業年度まで
  • 本文2.参照
  • 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号)
  • 2017年3月29日公表
  • 2017年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用
  • 指定国際会計基準(IFRS)又は修正国際基準(JMIS)に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社を本実務対応報告の対象範囲とするもの
  • 「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号)
  • 2017年3月29日公表
  • 2017年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用
  • 指定国際会計基準(IFRS)又は修正国際基準(JMIS)に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社を本実務対応報告の対象範囲とするもの
東京証券取引所
  • 「有価証券上場規程」
  • 2017年2月10日公表
  • 2017年3月31日
  • 金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告の提言を踏まえ、決算短信・四半期決算短信のサマリー情報の 使用義務を撤廃するもの
  • 「MBO後の再上場時における上場審査について」提出された意見とそれに対する考え方
  • 2017年1月31日公表

  • 本文1.参照