IPO(企業成長サポート)

関連法令等の改正

2017.07.20
企業成長サポートセンター マネージャー 公認会計士
瀬戸山 広樹

1. 関係法令等の改正の概況

2017年4月~6月に公表された、主な関係法令等の改正の状況は、表のとおりです。

この中で、読者の皆様に影響が大きいものとして、5月10日に会計基準委員会(以下、「ASBJ」という。)から公表されている、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」(以下、「本公開草案」という)が挙げられます。

2. 従業員等に発行する有償新株予約権の会計処理等に係る実務対応報告公開草案

(1) 概要

近年増加していた従業員等に対して発行した権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理について、実務上、報酬の付与ではなく、公正価値による発行と考え会計処理を実施している事案が多いのが実情でした。そのため、本公開草案において、当該有償新株予約権の会計処理について、通常のストック・オプションと同様に、ストック・オプション会計基準等を原則として適用し、費用処理が必要となることが規定されています。

(2) 適用範囲

本公開草案は、企業がその従業員等に対して勤務条件や業績条件などの権利確定条件が付されている新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引を対象としています。

(3) 会計処理

本公開草案において、以下の会計処理を行うものとしています。

① 権利確定日以前の会計処理

  • 権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員等からの払込金額を純資産の部に新株予約権として計上する。
  • 権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法等に基づき当期に発生したと認められる費用の額を算定する。
  • 当該有償新株予約権の公正な評価額は、公正な評価単価(付与日における評価単価であり、権利確定条件を考慮しないもの)に権利確定条件付き有償新株予約権数を乗じて算定する。
  • 権利確定条件付き有償新株予約権数は、付与日において、付与された数から権利不確定による失効の見積数を控除して算定する。また、付与日から権利確定日の直前までの間に権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合には、権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す。

② 権利確定後の会計処理

権利確定条件付き有償新株予約権が権利行使され、これに対して新株を発行した場合、新株予約権として計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える。

(4) 適用時期等

本公開草案は、施行日ではなく公表日以後適用し、公表日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、従来採用していた会計処理を継続することができるものとしています。なお、この場合、当該取引について一定の事項を注記する必要があります。

以上のように、本実務対応報告が公表されると、実務上、大きな影響を及ぼす可能性があるため、本実務対応報告の公表日については注意を払う必要があります。

<表>
区分 主な法令等 内 容
  • 金融庁
  • 2017年4月28日公布
  • 「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等
  • 公布の日から適用
  • 2016年7月1日から2016年12月31日までに公表された国際会計基準を指定国際会計基準とするもの
  • 企業会計基準委員会が2016年7月1日から2016年12月31日までに公表した解釈指針を指定国際会計基準に含まれる解釈指針とするもの
  • 金融庁
  • 2017年5月12日公布
  • 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令(案)」
  • 公布の日から適用
  • 貿易保険法及び特別会計に関する法律の一部改正に伴い、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等について所要の改正を行うもの
 
  • 金融庁
  • 公開草案
  • 2017年5月17日公表(6月下旬以降公布・施行予定)
  • 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等
  • 特定譲渡制限付株式等による株式の割当てを行う場合に、役員等に対する報酬の支給の一種であることに鑑み、ストック・オプションの付与と同様に、 売買報告書の提出制度及び短期売買利益の返還請求制度の適用除外とする改正及び有価証券届出書における「第三者割当の場合の特記事項」の記載を不要とする改正案
  • ASBJ
  • 2017年4月11日公表
  • 修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)
  • 公表日以後開始する連結会計年度から適用
  • 2014年1月1日から2016年9月30日までにIASBにより公表された会計基準等のうち2017年12月31日までに発効するものを対象としてエンドースメント手続を行い、改正修正国際基準の公表に至ったもの
  • ASBJ
  • 2017年5月2日公表
  • 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い
  • 2017年5月31日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用
  • 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」の改正に伴い、公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等について実務上の取り扱いを明らかにしたもの
  • ASBJ
  • 公開草案
  • 2017年5月10日公表(2017年7月10日までコメント募集)
  • 「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」(公開草案第52号)
  • 「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理(案)」(公開草案第57号)
  • 2.参照
  • ASBJ
  • 公開草案
  • 2017年6月6日公表(2017年8月7日までコメント募集)
  • 企業会計基準公開草案第60号「税効果会計に係る会計基準の一部改正(案)」等
  • 日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針のうち、繰延税金資産の回収可能性に関する定め以外の税効果会計に関する定めについて、表示及び注記事項に関して必要と考えられる一部の会計処理について見直しを行うことを目的としたもの