1. 関係法令等の改正の概況
2017年4月~6月に公表された、主な関係法令等の改正の状況は、表のとおりです。
この中で、読者の皆様に影響が大きいものとして、5月10日に会計基準委員会(以下、「ASBJ」という。)から公表されている、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」(以下、「本公開草案」という)が挙げられます。
2. 従業員等に発行する有償新株予約権の会計処理等に係る実務対応報告公開草案
(1) 概要
近年増加していた従業員等に対して発行した権利確定条件付き有償新株予約権の会計処理について、実務上、報酬の付与ではなく、公正価値による発行と考え会計処理を実施している事案が多いのが実情でした。そのため、本公開草案において、当該有償新株予約権の会計処理について、通常のストック・オプションと同様に、ストック・オプション会計基準等を原則として適用し、費用処理が必要となることが規定されています。
(2) 適用範囲
本公開草案は、企業がその従業員等に対して勤務条件や業績条件などの権利確定条件が付されている新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引を対象としています。
(3) 会計処理
本公開草案において、以下の会計処理を行うものとしています。
① 権利確定日以前の会計処理
- 権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員等からの払込金額を純資産の部に新株予約権として計上する。
- 権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法等に基づき当期に発生したと認められる費用の額を算定する。
- 当該有償新株予約権の公正な評価額は、公正な評価単価(付与日における評価単価であり、権利確定条件を考慮しないもの)に権利確定条件付き有償新株予約権数を乗じて算定する。
- 権利確定条件付き有償新株予約権数は、付与日において、付与された数から権利不確定による失効の見積数を控除して算定する。また、付与日から権利確定日の直前までの間に権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合には、権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す。
② 権利確定後の会計処理
権利確定条件付き有償新株予約権が権利行使され、これに対して新株を発行した場合、新株予約権として計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える。
(4) 適用時期等
本公開草案は、施行日ではなく公表日以後適用し、公表日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、従来採用していた会計処理を継続することができるものとしています。なお、この場合、当該取引について一定の事項を注記する必要があります。
以上のように、本実務対応報告が公表されると、実務上、大きな影響を及ぼす可能性があるため、本実務対応報告の公表日については注意を払う必要があります。
区分 | 主な法令等 | 内 容 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|