IPO(企業成長サポート)

関連法令等の改正

2019.04.25
EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
公認会計士 髙橋 朗

1. 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」の公布

2019年1月31日に内閣府令第3号「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(以下「本改正」という。)が公布されています。

本改正は、2018年6月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告における、「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」への適切な制度整備を行うべきとの提言を踏まえ、有価証券報告書等の記載事項の改正を行うためのものです。

2. 本改正の概要

「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告の提言を踏まえた改正の概要は以下のとおりです。

(1) 財務情報及び記述情報の充実

  1. 経営方針、経営戦略等について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を求める。
  2. 事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を求める。
  3. 会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識の記載を求める。

(2) 建設的な対話の促進に向けた情報の提供

  1. 役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を求める。
  2. 政策保有株式について、保有の合理性の検証方法等について開示を求めるとともに、個別開示の対象となる銘柄数を現状の30銘柄から60銘柄に拡大する。

(3) 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

  1. 監査公認会計士等を選定した理由及び方針(解任または不再任の決定の方針を含む)、監査役及び監査役会が監査公認会計士等又は会計監査人の評価を行った旨及びその内容の開示を求める。
  2. ネットワークファームに対する監査報酬等の開示を求める。
  3. 監査役会等の活動状況、監査法人による継続監査期間の開示を求める。

(4) その他

最近5 年間の株主総利回りの推移について、提出会社が選択する株価指数における最近5年間の総利回りと比較した記載を求める。

3. 適用時期

公布の日から施行されています。なお、改正後の規定の適用時期は、以下のとおりです。

(1) 上記「(2) 建設的な対話の促進に向けた情報の提供」欄に記載の項目等は、2019年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用。(注)

(2) (1) 以外については、2020年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用。ただし、2019年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からの適用可。

(注)「(3) 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」のうち、①および②に記載の項目については、2019年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(なお、②については、2019年3月31日から2020年3月30日までに終了する事業年度に係る有価証券報告書等については、従前の規定によることが可。)となりますので、ご留意ください。

4. 上場準備会社の対応

本改正では、企業情報の開示の充実を通じ、中長期的な企業価値向上に向けた投資家と企業との対話がより実効的なものとなる事が期待されています。本改正は、上場会社が提出する有価証券報告書だけに影響するのでなく、上場する際に作成が必要な新規上場申請のための有価証券報告書や有価証券届出書でも同様の開示が必要とされ、対外的な説明責任を負うことになります。したがって、上場準備会社においても、当該開示を念頭に置いた会社の現状の確認、開示に向けた社内体制の整備等が必要になります。例えば、役員報酬の決定等(特に業績連動報酬が含まれる場合)の背景や考え方の説明が求められるようになるため、自社の役員報酬について今一度確認が必要となるケースがあります。上場準備会社においては、早期かつ適切に準備をすることにより、上場会社になった際に、適切な開示ができるとともに、長期的な視点では企業価値の向上に資するものと考えられます。

(下の図をクリックすると拡大します)
関連法令等の改正:適用時期と有報の記載内容 表