IPO(企業成長サポート)

関連法令等の改正

2020.04.30
EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
公認会計士 安藤 正伸

1.企業会計基準委員会(ASBJ)は、2019年10月30日に企業会計基準公開草案第69号(企業会計基準第24号の改正案)「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」を公表

企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」という)は、2019年10月30日付で企業会計基準公開草案第69号(企業会計基準第24号の改正案)「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表しています。

本公開草案は、2018年11月に開催された第397回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続に係る注記情報の充実について検討することが提言されました。この提言を受けて、ASBJでは、2018年12月より当該提言内容について審議を開始し、その結果を公開草案として公表しています。

(1) 本公開草案の概要

①開示目的

我が国の会計基準等では、会計方針の開示について、企業会計原則注解(注1-2)において「財務諸表には、重要な会計方針を注記しなければならない。」と定められています。重要な会計方針に関する情報は、財務諸表利用者が財務諸表の作成方法を理解し、財務諸表間で比較を行うために不可欠な情報であることから、本公開草案においても上述の企業会計原則注解(注1-2)の定めを引き継いでいます。

このため、重要な会計方針に関する注記は、財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則及び手続(どのような場合にどのような項目を計上するのか、計上する金額をどのように算定しているのか)の概要を示すことを目的とすることとしています。当該目的の趣旨から、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合も同様であるとされています。

②関連する会計基準等の定めが明らかでない場合

「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」とは、特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しないため、会計処理の原則及び手続を策定して適用する場合をいいます。これには、例えば関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則及び手続で重要性があるものが該当すると考えられます。なお、対象とする会計事象等自体に関して適用される会計基準等については明らかではないものの、参考となる既存の会計基準等(他の会計基準設定主体が定めた会計基準等を含む。)がある場合には、当該既存の会計基準等が定める会計処理の原則及び手続も含まれるとされています。

また、会計基準等には、一般に公正妥当と認められる会計処理の原則及び手続を明文化して定めたもの(法令等)も含まれるとされており、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」には、業界の実務慣行とされている会計処理方法で重要性があるものも該当すると考えられるとされています。これには、企業が所属する業界団体が当該団体に所属する各企業に対して通知する会計処理方法が含まれるとされています。

現状では、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に、企業が実際に採用した会計処理の原則及び手続が重要な会計方針として開示されているか否かについて実態は様々であると考えられるため関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に企業が採用した会計処理の原則及び手続について、財務諸表利用者が理解することが困難なことがあるものと考えられています。

このため、関連する会計基準の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続の開示上の取扱いを明らかにして、財務諸表利用者が財務諸表を理解する上で不可欠な情報が提供されるようにすることは有用であるとされています。

③重要な会計方針に関する注記

会計方針の例としては、以下のようなものがあり、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができます。

  • 有価証券の評価基準及び評価方法
  • 棚卸資産の評価基準及び評価方法
  • 固定資産の減価償却の方法
  • 繰延資産の処理方法
  • 外貨建資産及び負債の本邦通過への換算基準
  • 引当金の計上基準
  • 収益及び費用の計上基準

なお、会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則及び手続が認められていない場合には、当該会計方針の注記を省略することができます。

また、審議の過程では、開示の詳細さ(開示の分量)について指針や目安を示すべきか検討を行ったものの、注記の内容は企業によって異なるものであり、開示の詳細さは各企業が開示目的に照らして判断すべきものと考えられたことから、開示の詳細さについては本公開草案においては特段定めないこととしています。

(2) 適用時期及び経過措置

本公開草案は、2021年3月31日以降終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することを提案しています。また、公表日以降終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができることも提案しています。

2. 2019年12月12日に、政府与党は「令和2年度税制改正大綱」を公表

法人課税

(1) 連結納税制度の見直し(グループ通算制度への移行)

①概要

企業グループ全体を一つの納税単位とし、一体として計算した法人税額等を親法人が申告する現行の連結納税制度に代えて、親法人及び各子法人が個別に法人税額等の計算及び申告を行いつつ損益通算等の調整を行う「グループ通算制度」が導入されます。現行の連結納税制度における損益通算等の基本的な枠組みを維持したまま、連結グループ内の1社に計算誤りがあった場合でも現行制度と異なり、計算誤りがあった法人のみ修正を行うこととされ企業の事務負担の軽減に配慮した制度となっています。

②適用時期

グループ通算制度は、2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用が開始されます。連結納税制度を適用している連結法人は、2022年4月1日以後に開始する事業年度から自動的にグループ通算制度へ移行されます。なお、連結親法人が2022年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに届出書を提出することにより、グループ通算制度を適用しない単体納税法人となることができるとされています。

(2) オープンイノベーション促進税制の創設

①概要

事業会社等が、2020年4月1日から2022年3月31日までの間に、一定の要件を満たすベンチャー企業の株式を出資の払込みにより取得し、かつ、これをその取得した日を含む事業年度末まで有している場合、その取得価額の25%以下の金額を特別勘定として経理した時は、その事業年度の所得の金額を上限に当該金額の損金算入が認められます。ただし、当該株式を譲渡した場合や配当の支払いを受けた場合等には、特別勘定のうち対応する部分を取り崩し、益金算入することになります。なお、5年以上保有した場合にはこの限りではありません。

(3) 交際費等の損金不算入制度の適用期限が2年延長

①概要

各事業年度に支出する交際費等の額のうち、損金算入限度額を超える金額は損金に算入しないこととされており、当該制度の適用期限が2年間延長されます。なお、中小企業における交際費課税の特例(定額控除限度額(800万円)までの交際等を全額損金算入)については、見直しを行うことなく2年間延長されます。

3. 上場準備会社の対応

重要な会計方針に関する注記は、本公開草案における「開示目的」にもあるとおり、財務諸表を作成するための基礎となる事項への理解を財務諸表利用者に促し、採用した会計処理の原則及び手続の概要を示すことにあります。そのため、会計方針の適用に当たっては企業それぞれの実態に沿うものであるか十分に検討することが求められ、その結果を適切に開示することが重要となります。特に上場準備会社においては多様なビジネスモデル、取引形態が発生することが想定されます。それには、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合も考えられます。その場合には採用した会計処理の原則及び手続の開示上の取扱いを明らかにすることで、財務諸表利用者の理解を高めるための不可欠な情報が提供されると考えられます。また、現行の税制を的確にとらえることは法令遵守の観点からも企業の行動として重要であるため、常に最新の情報を収集できる体制を整えることが望まれます。