IPO(企業成長サポート)

関連法令等の改正

2020.08.03
EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
公認会計士 松本美咲

1.企業会計基準委員会(ASBJ)は2020年3月31日に企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」を公表

企業会計基準委員会(以下、「ASBJ」という)は2020年3月31日付で企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」を公表しています。

本基準は2018年11月に開催された第397回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、「見積りの不確実性の発生要因」に係る注記情報の充実について検討することが提言されました。この提言を受けて、ASBJは2018年12月より、「見積りの不確実性の発生要因」に係る注記情報の充実について審議を行っていましたが、2020年3月27日開催の第428回企業会計基準委員会において、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」の公表が承認されました。本会計基準については、2019年10月30日に公開草案を公表し、広くコメント募集を行った後、ASBJに寄せられたコメントを検討し、公開草案の修正を行った上で公表するに至ったものです。

(1) 本基準の概要

①開発にあたっての基本的な方針

原則(開示目的)を示したうえで、具体的な開示内容は企業が開示目的に照らして判断することとしています。また、国際会計基準(IAS)第1号「財務諸表の表示」(以下「IAS1号」という)第125項の定めを参考とすることとしました。

②会計上の見積りの開示目的

本会計基準は、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを開示目的としています。

財務諸表を作成する過程では、財務諸表に計上する項目の金額を算出するにあたり、会計上の見積りが必要となるものがあります。会計上の見積りは、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的な金額を算出しますが、財務諸表に計上する金額に係る見積り方法や、見積りの基礎となる情報が財務諸表作成時にどの程度入手可能であるかは様々であるため、財務諸表に計上する金額の不確実性の程度も様々となります。したがって財務諸表利用者は財務諸表に計上した金額のみでは、当該金額が含まれる項目が翌年度の財務諸表に影響を及ぼす可能性があるかどうかを理解することは困難となります。

このため、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスク(有利となる場合及び不利となる場合の双方が含まれる。以下同じ。)がある項目における会計上の見積りの内容についての情報は財務諸表利用者にとって有用な情報であると考えられます。

翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目は企業によって異なるため、個々の会計基準を改正して会計上の見積りの開示の充実を図るのではなく、会計上の見積りの開示について包括的に定めた会計基準にて原則(開示目的)を示し、開示する具体的な項目及びその注記内容については当該原則(開示目的)に照らして判断することを企業に求めることとしました。

(2) 開示する項目の識別

①項目の識別における判断

翌年度の財務諸表に与える重要な影響を検討するにあたっては、影響の金額的な大きさ及びその発生可能性を総合的に勘案して企業が判断します。

一方、翌年度の財務諸表に与える影響を検討するにあたり、何と比較して影響の金額的な大きさを判断するのか、どの程度の影響が見込まれる場合に重要性があるとするかなど、項目の識別について、判断のための詳細な規準は示されていません。

②識別する項目

識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債となります。当年度の財務諸表に計上した金額に重要性があるものに着目して開示する項目を識別するのではなく、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものに着目して開示する項目を識別することとしています。このため、例えば固定資産について減損損失の認識は行わないとした場合でも、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクを検討したうえで、当該固定資産を開示する項目として識別する可能性があります。

なお、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、当年度の財務諸表に計上した収益及び費用、並びに会計上の見積りの結果、当年度の財務諸表に計上しないこととした負債を識別することを妨げません。また、注記において開示する金額を算出するにあたって見積りを行ったものについても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、これを識別することを妨げません。

(3) 注記事項

①注記項目

開示目的に基づき識別した項目のそれぞれについて、会計上の見積りの内容を表す項目名とともに次の事項を注記します。

ⅰ)当年度の財務諸表に計上した金額ⅱ)会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

ⅰ)及びⅱ)の事項の具体的な内容や記載方法(定量的情報若しくは定性的情報、又はこれらの組み合わせ)については開示目的について判断することとしています。

なおⅰ)及びⅱ)の事項について、会計上の見積りの開示以外の注記に含めて財務諸表に記載している場合には、会計上の見積りに関する注記を記載するにあたり、当該他の注記事項を参照することで当該事項の記載に代えることができます。

②財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

  • (ア)当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法
  • (イ)当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定
  • (ウ)翌年度の財務諸表に与える影響

なお、これらは例示であり注記事項は開示目的に照らして判断するとしています。

(4) 適用時期及び経過措置

2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用されます。ただし、公表日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から本会計基準を適用することができます。

本会計基準の適用初年度において、本会計基準の適用は表示方法の変更として取り扱うこととなります。ただし、改正企業会計基準第24号第14項の定めにかかわらず、本会計基準に定める注記事項について、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができます。

2. 経済産業省CIP(技術研究組合)の設立・運営ガイドラインの改定

(1) CIP(技術研究組合)とは

技術研究組合は、複数の企業、大学、独立行政法人等が協同して試験研究をおこなうことにより、単独では解決できない課題を克服し、技術の実用化を図るために、主務大臣の認可により設立される法人です。

特徴としては、組合には①法人格を有する大臣認可法人であること、②組合が賦課金により取得した設備は税制上の圧縮記帳が可能であること(適用期限は令和3年3月末まで)、③要件を満たした場合、特許料等の減免制度の利用が可能であること及び④組合から株式会社等へのスムーズな移行が可能です。組合員側のメリットとしては支払う賦課金について①試験研究費として費用処理できること及び②法人税額から20%の税額控除が可能となります。

(2) 改定の趣旨

従来から技術研究組合(以下CIP)の制度はありましたが、ナショナルプロジェクトの受託を前提として設立されていることが多く、CIPの収入の割合の約7割は公的資金に依存しています(平成30年度技術研究組合概況調査より)。現制度の制定から約10年が経ち、オープンイノベーションのための研究開発の外部連携の推進や、それに向けたCIP等外部組織の利用拡大を図るべく改定が行われました。

(3) 改定内容

①設立手続きの簡素化

  • 設立申請時の手順の解説、申請書の添付書類の簡素化

②認可時の審査の明確化

  • CIPの新規設立、株式会社設立に係る認可に関連する法律の規定と審査の主なポイントの整理

③CIP業務運営内容の明確化

  • CIPにおける成果の実用化の考え方の整理
  • CIPにおいて組合員が負う責任の整理
  • CIPから株式会社を設立する際の株式割当ての考え方の整理

④ロゴマークの策定

3. 上場準備会社の対応

会計上の見積りの主な適用対象としては固定資産の減損損失の計上要否及び繰延税金資産の回収可能性の判定があります。これらの会計上の見積りの基礎となる主たる情報は将来の業績見込みです。まず、上場準備会社におかれましては、予算管理体制だけでなく、決算業務の会計上の見積りにおいても、上場後を見据えて予算編成プロセスが運用できているか、実現可能な予算策定ができる体制を整えていくことが重要となります。具体的な開示例については、今後の動向をご確認ください。

経済産業省はオープンイノベーションの推進を図るため、様々な施策を整備しています。感染症の蔓延という予期せぬ事態の渦中にいますが、社会が大きく変わるきっかけとなっています。このような施策をうまく活用することで上場準備会社のさらなる成長、ひいては社会のよりよい変革が起きることを願ってやみません。