監査法人の監査を受けると利益が減ると聞いたのですが、本当ですか? 一方で、早い段階で監査を受けた方がよいとも聞きますが、何故でしょうか?

2012年11月27日
カテゴリー IPO Q&A

Question

監査法人の監査を受けると利益が減ると聞いたのですが、本当ですか? 一方で、早い段階で監査を受けた方がよいとも聞きますが、何故でしょうか?

Answer

監査法人の監査を受けるから利益が減るのではなく、財務諸表を作成する会計処理が変更されることにより、利益に影響を与えることがあるからです。また、利益水準は、上場審査事項であり、IPOに向けて非常に重要な要素となります。

監査法人の監査を受けていない非上場会社は、一般的に税務に沿った会計処理が行われております。しかし、IPOのためには、一般投資家が他社の公表されている財務諸表と比較できるように、財務諸表を上場会社と同じ会計基準で作成する必要があります。非上場会社では認められていた「税務会計」と上場会社に求められる「企業会計」には収益の認識時点などに違いがあるため、利益に影響が出ることになります。また、企業会計においては、各種引当金をはじめとした見積計上すべき費用が多いため、税務会計よりも利益が減るケースが多いかもしれません。

「企業会計」の適用により影響を与える項目は多岐にわたり、どのくらい影響があるのかは会社ごとに異なります。例えば、退職金制度があり比較的従業員が多く社歴が長い会社、研究開発型企業やソフトウェア制作会社、棚卸資産を多額に保有している会社、固定資産を多く保有している会社などは、影響を受けやすいと考えられます。さらに、上場会社に求められる会計処理も年々変化しています。将来的には、IFRS(国際会計基準)が上場会社に求められる会計処理になることも検討されています。

上場審査で求められる利益水準は、上場会社と同じ会計基準を適用した結果の利益となります。上場会社と同じ会計処理に変更した結果、利益に与える影響が多額となり、上場の目標時期を延期しなければならないといったことが起こらないように、IPOを目指す場合には、監査法人のショート・レビューを早い段階で受けるのが望ましいと考えます。既に、過去にショート・レビューを受けられた会社でも、上場企業に求められる会計基準は年々変化しているため、ショート・レビューを受けて時間が経過している場合には、監査法人に相談することをお勧めします。